卑屈な人

  • DATE : 2011.03.04
  • CATEGORY : column

たこ焼きに付いてくる爪楊枝ってなんかでかくないですか。でかいというかなんか長いというか太いというか、なんか頑丈っていうか。定食屋とか家とかにある爪楊枝とはちょっと違いますよね。なんかもう串みたいなやつですよね。てかたぶん串ですね。

もちろん頑丈な串タイプのほうが食べやすいからありがたいんだけど、たまに普通の小さい爪楊枝を使ってるたこ焼き屋がある。まあ、たこ焼きが小粒だったりしたら小さい爪楊枝でも全然問題ないんだけど、大粒のたこ焼きとかだと小さい爪楊枝では食べにくい。ボロッと崩れる。あー、あー、ってなる。あー、崩れる崩れる崩れる崩れる崩れたー、ってなる。無力な自分を責める。人と接するのが億劫になる。家に篭りがちになる。なんでもAmazonで買う。Amazon儲かる。爪楊枝が小さいとAmazonが儲かる。

いや、これもうあれなんですよあれ、たこ焼き屋が自分のポテンシャルに気づいてないの。卑屈になっちゃってる。「うちのたこ焼きなんて普通の爪楊枝で充分だろ」みたいに決め込んでる。たぶんよその店のたこ焼き見て「うわあ、あそこのたこ焼きでけえ」ってなってもう自信なくしちゃったんだ。あれほんとは今川焼きなのに遠目から見て「でけえなー」ってなって自信なくしちゃった。食ってみて「でかいし甘いなー」って自信なくしちゃった。

いや、まあ、自信なくすのは勝手なんだけど食べにくいのはすごく困る。店主の卑屈さでAmazonばっかり儲かって困る。

そういえば高校の時の同級生ですごい卑屈なやつがいた。

あの、まあ、俺もそんなに友達が多いほうじゃなかったんだけど、そいつは本当に学校以外の場所で遊ぶような友達が全然いなかったみたい。俺は学校でもそいつとそんなに会話したことなかったんだけど、夏休みかなんかに原付の免許を取りに行ったら、たまたまそいつも居たんですよ。で、ふたりとも免許とれたから、「明日一緒にバイク屋さん行こうか」って誘ったら「うん、行こう行こう」って言ったから待ち合わせしたんですよ。

で、まあ、翌日、待ち合わせの時間になっても全然そいつ来ない。1時間くらい待っても全然そいつ来ない。そいつっぽいやつも来ない。「50年後のあいつこんな感じかな」っていうジジイは来たけどそいつ来ない。で、まあ、電話番号とかも知らなかったし「まあいいか」と思ってひとりでバイク屋に行ったんです。正直ちょっと寂しかったけどまあ用事ができたとかだろうな、と思って気にしないようにした。

で、次に学校で会ったとき「あの約束した日どうして来なかったの?」って訊いたら「どうせぼくとの約束なんて誰も守らないと思って……」

ええー!なにそれー!卑屈ー!超卑屈ー!卑屈というかどっちかって言うと傲慢ー!卑屈すぎてもはや傲慢ー!なにこいつー!こわいこわいこわいよー!こんなやつに免許与えたらだめだよー!「どうせぼくのウィンカーなんて誰も見てないし……」とか言っていきなり右折するよー!こわいよー!

でもまあ、なんか怒るに怒れなくて「お、おお、そうか、元気だせよ」って励ましといた。


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